億万長者しか乗れないアドベンチャー(一人US$250,000 日本円で約3500万)タイタニック遊覧潜水ツアー、オーシャンゲート社の潜水艦タイタン号が行方不明になり捜索が行われていましたが、壊滅的な爆縮により、乗艦していた5人は一瞬のうちに亡くなった、‘would have died in milliseconds’ (100万分の1秒で亡くなった)自分が亡くなったすらも気づかない、という記事を読みました(ニュージーランド・ヘラルド)。
私の住むニュージーランドではタイタニック潜水艦行方不明のニュースは大きく報道されていました。1912年に起こったタイタニック号の悲劇はニュージーランドに住んでから、身内に当事者がいる、という話を聞いたり、読んだりすることがあり、タイタニック号の悲劇は英語圏ではセンシティブ、デリケートな事項という印象を個人的に持っています。
今回のタイタニック潜水艇の事故について英語圏の報道を調べてみたことを考察、まとめてみました。
潜水艦タイタン 亡くなられたオーシャンゲート社CEOのRush氏
変わった形の潜水艦だな、と初めて見たときの印象でした。調べていくと潜水艦タイタンの素材はカーボンファイバーとチタンで、航空機材に使われる素材。オーシャンゲート社長で今回のツアーにパイロットとして乗船し、亡くなったStockton Rushさん(61) プリンストン大学で航空工学士、UCLAでビジネス修士、ユナイテッド航空養成校でキャプテンの資格を取得、そしてイノベーターとして、宇宙旅行はできるのに、海底探検旅行は一般にできない、のはおかしい、として自ら、オーシャンゲート社を起業、潜水艦タイタンを作り、タイタニック見学ツアーは2021年から行われ、2022年のツアーも無事に生還、そして、今回の事故が起こりました。(USA Today)
潜水艦タイタンはその安全性を以前から指摘されていました。ですが、CEOのラッシュ氏は革新技術で安全証明書の発行を待つのは科学研究の妨げ、などとコメントし、証明書を持たずに運営していました。
前回までのタイタン潜水艦体験者のコメント
ウェリントン・ビクトリア大学卒業のブリジット・バックストン博士(Dr Bridget Buxton, a marine archaeologist海洋考古学)は2021年にCEOのラッシュ氏とタイタン潜水艦に乗船しています。彼女は当時の体験をインタビューで絶賛しています。彼女は従来の小さな外付き操縦カメラではなく、深海で直接360度で観察することができる、操縦はプレイステーションゲームのコンソルによく似たシステムなので、誰でもサブキャプテンとして操縦できるチャンスがある。深海観察のあいだ、たいていの間、音楽を聴いていました。そして、普通に乗員と話すことができます(NZヘラルド)。
ブリジット博士がラッシュ氏とタイタン潜水艦に乗船している様子。とても深海にいるとは思われません。
世界の冒険プログラムを手掛けるディスカバリーチャンネルのカメラマン、ブライアンさん(Brian Weed, 42)は2021年にタイタニック号への潜水テストに参加しました。しかし、このテスト乗船は推進システムに問題がおこり、タイタニック号まで四分の一くらいの海底でストップし、そのときの様子を “sitting ducks in the water”と表現しています。ブライアンさんは1週間後に再テストに招待されましたが断っています。潜水艦の機能の問題だけでなく、乗船後、水圧への対策なのか、乗船後、外からボルトで閉じられ、中からは開けれらい状態で潜水する仕組みになっていて、もし、海上にでられても、中からは開けれない、ということも、疑念だ、とコメントしています。
同時にこの事故の前に、同じく、ディスカバリーチャンネルで番組司会者のジョッシュさん(Josh Gates)は自身のツイッターで今回の事故で亡くなられたイギリス人実業家で冒険家のハーミッシュさん(Hamish Harding)の武運を祈っている、とツイートしています。このときのタイタニックへの潜水は番組“Expedition Unknown”で放送されて、そのときも大きな音がした、今はエピソードが見れない、とJoshさんにコメントが寄せられていました(NBCニュース)
ドイツ人、リタイア実業家で冒険家のアーサーさんArthur Loibl, 61は2021年に今回の亡くなられたオーシャンゲートCEOラッシュ氏とタイタニックへの潜水経験は37回という元フランス海軍潜水エキスパートのポールさん、Paul-Henry Nargeolet,73とツアーに参加しました。今回の事件について、当時を振り返って、潜水艦タイタンの運営に不信を感じたが、今から思えば、自殺行為に等しい、とコメントしています(The Associated Press)。
1912年タイタニック号乗船犠牲者との不思議な縁
偶然か必然か、亡くなられたラッシュ氏の奥様は1912年タイタニック号の一等室乗客で映画タイタニックの救命ボートに乗船することを拒否し亡くなられた老夫婦のモデルとして描かれた、ニューヨークが本社のメイシーズ百貨店の共同オーナーのMr. Straus(1845年生)氏が, ひ、ひおじいさま(great-great-grandfather)でした(ニューヨークタイムズ)。
映画タイタニック ジェームス・キャメロン監督の指摘
映画タイタニックを作った、ジェームス・キャメロン監督はこの事件について、イノベーター革新者としてラッシュ氏自身が潜水することは理解できる、だか、安全性が確認されていない技術、素材で作られた潜水艦で海底3000kmへの潜水に有料アドベンチャー旅行として、1500人以上の犠牲者が眠るタイタニック号への潜水への意義をはっきりと問題提起しました(BBC)。
今回の犠牲者、高額アドベンチャーツアーの参加者として亡くなられた、パキスタン系イギリス人親子Shahzada Dawood(48)さん、 Suleman Dawood(19)さん、Sulemanさんはこの旅行の前に、怖いけど父の日だから行ってくる、とコメントを残されています。また、イギリス人実業家でアマゾンCEOJeff Bezosと一緒に宇宙旅行、南極体験ツアーなど、冒険家としてギネスブックにも記載されているHamish Harding(58)さんは、ご自身のフェイスブックで現地の不天候についてコメントしながらも、今回のアドベンチャーを楽しみされてる様子を残されています。
潜水艦タイタンを作られた、オーシャンゲート社CEOで今回、亡くなられたラッシュ氏は未知の先端技術を駆使し命の危険が伴う冒険もいとわない、イノベーターでありアドベンチャラーとして尊敬の念を抱きます。定員5名のうち、3名は “citizen scientists”と名付けて、その高額費用を払える、一般民に深海探検への門を開くというアドベンチャー旅行は革新的なビジネスでもあり、また、そうでないと、探検費用が賄えない、という事情もあったことでしょう。いろいろ問題が指摘されていたタイタン潜水艦。素人ながらにも、カーボンファイバーという構造上、何度も潜水を繰り返すと、外壁が弱くなっていたのでは、もし、2021年と2022年の成功のあと、2023年は新モデルで挑んでたら、など、憶測してしまいました。今回の事故で亡くなられた皆さまの冥福を心からお祈りいたします。
英文参考文献
Titanic submarine tragedy: New Zealander Dr Bridget Buxton key part of expedition
Titanic submersible tragedy: What happens during a catastrophic implosion?
Titanic sub tragedy: Holidays with hubris, the cost of adventure tourism and luxury travel
Titan sub CEO dismissed safety warnings as ‘baseless cries’, emails show
Titan passengers share eerie accounts of safety issues on the submersible’s past expeditions